韓国で部屋を探し始めると、まず「アプリはどれを使えばいい?」という疑問にぶつかる。직방(チクバン)、다방(タバン)、네이버 부동산(ネイバー不動産)——それぞれ何が違うのか、外国人に使えるのかどうか。でも正直なところ、アプリの比較より先に理解すべきことがある。韓国の賃貸制度そのものだ。

チョンセって何?ウォルセとどう違う?

韓国には、世界でもほとんど見られない独特の賃貸制度がある。

월세(ウォルセ) は馴染みやすい。敷金を入れて、毎月家賃を払う形だ。物件情報に「500/50」と書いてあれば、保証金500万ウォン、月額50万ウォンという意味になる。「1,000/50」なら保証金1,000万ウォン、月額50万ウォン。数字の単位が1万ウォンなので、見慣れるまで少し時間がかかる。

전세(チョンセ) は、最初に聞くと頭が混乱する制度だ。物件価格の50〜80%に相当する巨額の一時金を家主に預け、その代わり2年間の賃貸期間中は月々の家賃を一切払わない。契約が終わると全額返ってくる。家主はその預かり金を運用して利益を得る仕組みだ。

長らくチョンセが韓国の賃貸市場の主流だったが、2022年4月には初めてウォルセ契約の割合(50.4%)がチョンセ(49.6%)を上回った。チョンセは今も健在だが、比率は変わりつつある。

ひとつ重要なことを伝えておきたい。韓国ではチョンセ詐欺が社会問題になっている。家主が抵当権のついた物件でチョンセ保証金を受け取り、返済できなくなって入居者が保証金を失うケースが実際に起きている。チョンセを検討するなら、登記簿謄本の確認と、信頼できる不動産業者を通じた契約が不可欠だ。

アプリで部屋は見つからない。不動産屋を見つけるために使う。

これが外国人の最大の誤解だ。韓国の不動産アプリは、Zillowや日本の賃貸サイトのように物件を直接探すツールではない。アプリに掲載されているほぼすべての物件は、부동산(プドンサン)——不動産仲介業者が登録したものだ。

アプリの本当の使い方は、目当ての地域でどの不動産屋が営業しているかを把握し、おおよその相場を掴んでおくことにある。実際の契約は、仲介業者のオフィスに直接出向いて、その場で物件を見て、その日のうちに決めるという流れで進む。

「その日のうちに」というのは誇張ではない。良い物件はすぐに決まってしまう。気に入った部屋があれば、その日に手付金を払ってキープするのが当たり前のペースだ。

直房(직방)——まずここから始めよう

外国人コミュニティで最も多く推奨されているアプリだ。韓国で最も広く使われている不動産アプリで、インターフェースはすべて韓国語だが、地図ベースの操作が直感的なので翻訳アプリを併用しながら使える。

원룸(ワンルーム)、투룸(ツールーム)、오피스텔(オフィステル)、빌라(ヴィラ)、아파트(アパート)など住居タイプで絞り込めるほか、チョンセ・ウォルセの区別や価格帯のフィルターもある。地図ビューで特定のエリアにある不動産屋の位置を一目で把握できるのが特に便利だ。

ただし、掲載されているすべての物件が実在するわけではない。いわゆる「허위매물(虚偽物件)」——実際にはすでに入居済みか、そもそも存在しない物件——が一定数含まれている。직방はあくまで「この地域の不動産屋はどこか」「相場はいくらか」を把握するためのツールとして使うのが正解だ。

ネイバー不動産——相場調査に使う

ネイバーマップと統合された形で使いやすく、全国の物件カバレッジが広い。ソウル以外の地方都市では実際に役立ったという声が多い。ある外国人は地方の部屋をネイバー不動産で見つけ、不動産屋に連絡して3日で入居できたという話もある。

ソウルでは話が変わる。競争が激しく、物件の動きが速すぎて、アプリで見つけた時点ですでに決まっていることが多い。ソウル市内での部屋探しには「あまり使えない」という評が目立つ。とはいえ価格の相場感を掴むには依然として有効だ。

ホガンノノ(호갱노노)——相場より高い値段をつかまされないために

名前からして面白い。「호갱」は韓国語のスラングで「カモ」「ぼったくられる人」という意味で、「노노」は英語の"no no"。つまり「カモになるな」というアプリだ。

これは物件検索アプリではなく、実際の取引価格データを表示する分析ツールだ。特定の建物でこれまで実際にいくらで取引されたかを確認できる。仲介業者から価格を提示されたとき、「これが妥当な金額かどうか」を検証するために使う。

インターフェースがかなり複雑で、ある程度の韓国語読解力がないと使いこなすのは難しい。ただ、アプリを開いて業者に見せるだけでも「この人はちゃんと調べてきた」という印象を与えられる。

ピターペン(피터팬)——仲介手数料を節約したいなら

韓国の賃貸では복비(ポクビ)——仲介手数料——が発生する。借主も貸主も支払う。法律で上限が定められているが、契約金額によっては無視できない金額になる。

ピターペン(peterpanz.com)は、家主と入居者が直接やり取りできる物件を多く扱うプラットフォームだ。仲介業者を介さないケースもあるため、手数料がかからないか大幅に減らせることがある。직방と比べてデータベースが小さく、物件数は少ないが、韓国語で直接やり取りできるならチェックする価値はある。

茶房(다방)——使わなくていい

外国人コミュニティでの評判はほぼ一致している。「ダウンロードすら必要ない」。

다방に掲載されている写真は、実態とかけ離れているケースが多い。過度に加工されていて、実際に行ってみると全く別の部屋が待っているという話が後を絶たない。다방経由で連絡した業者は押し売りが激しく、不誠実な対応をするという声も多い。ある外国人は다방経由の業者を全てリストから外した、と述べていた。

価格帯の参考程度に見ることはできても、実際の部屋探しに使うのは避けた方がいい。

実際の部屋探しはこう進む

직방で目当てのエリアの不動産屋の場所と相場を把握する。それから実際にその地域を歩いてみる。不動산屋は思った以上に多く、窓に物件情報が貼り出されている店がすぐ見つかる。入って、条件を具体的に伝える。

住居タイプ、保証金と月額の予算、入居希望日、こだわり条件(洗濯機の有無、階数、駅からの距離など)をはっきり伝えることが大事だ。「その物件はないけど似たようなのがある」と言われたら慎重になろう。大抵は条件が劣るか、値段が高いかのどちらかだ。

韓国語のできる知人や友人を連れて行けると心強い。特にソウルでは業者が手慣れていて、交渉のテンポが速い。

いくつか注意点も。옥탑(屋上部屋) は建物の状況によっては違法なケースもある。반지하(半地下) は家賃が安い分、夏の浸水やカビのリスクがあるので勧めない。入居日には部屋の傷や汚れを全て写真に残しておこう。既存の損傷は1ヶ月以内に家主に報告しないと、退去時に自己負担になる可能性がある。

予算の現実

保証金1,000万ウォン、月額70万ウォンは「ソウルではかなりタイト」な予算だ。地方都市なら十分な条件で部屋が見つかるかもしれないが、ソウル中心部だと選択肢が限られる。

渡韓前に직방でフィルターをかけてみて、自分の予算で実際に何が出てくるか確認しておくと良い。現地に来てから「思ってたのと違う」とならないための、一番手軽な現実確認方法だ。

アプリは出発点に過ぎない。部屋を見つけてくれる魔法のツールではなく、良い不동산屋にたどり着くための地図だ。そこから先は、足を使って動くことになる。